千年企業研究会

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第55回

労働法の講義を始めるにあたり

■労働法の講義を始めるにあたり

今まで会社法、会計学と勉強してきて、いよいよ本日から労働法について取り上げていきます。細かい専門的な話をする訳ではありませんので、肩の力を抜いてお聞き頂ければと思います。私のビジネス人生を振り返りますと、そのうちの約半分が人事・労務の仕事に携わってきたことになります。皆さんにお伝えするのはその経験談です。細かい法律を逐条的に取り上げるのではなく、社長の立場でどういうスタンスで労働法に取り組むか、ということについてお伝えしたいと思います。何よりも「社員を大切にする」「社員を幸せにする」という姿勢を念頭に置いて、講義をお聞き頂きたいと思います。

■アメリカの賃金制度について

労働法の講義を始めるにあたり、私がアメリカに渡った際に強く印象に残った「アメリカの賃金制度」の一例についてお話しさせて頂きます。日本でも賃金の支給形態は様々ですが、アメリカでは多くの場合、次の様に分かれてきます。経営層等の幹部社員(Officer、Director等)は年俸制、一般社員から下がっていくに連れて、月給、週給月給、日給月給、時間給月給と変わってきます。果てはチップ、言わば「瞬間給」という人もいます。このことからはアメリカの働き方が見えてきます。アメリカでは自身が任された仕事の範囲でのみ、仕事をするということです。日本では手が空けば、忙しい人や部署の仕事を手伝うことがありますが、それは権利を超えることとしてアメリカではほとんどないことです。このことは大変衝撃的でした。

また、賃金格差についても印象に残っています。アメリカでは職階給として賃金が決まってきます。取締役クラスになりますと最低限保証される報酬の他に役員賞与があります。決算で計上できた最終的な利益は、役員賞与(ストックオプション含む)、配当、内部留保に配分されます。それぞれの割合は会社の施策によりますが、大変な金額になります。アメリカには夢があると感じる一方、勝ち負けの差がハッキリしていると感じたものです。

■労働法に係る用語について

次に労務・人事関係で目にする用語について取り上げたいと思います。労働者の給料は一般的に「賃金+一時金」又は「給与+賞与」等で表現されます。両者の意味する結果は同じですが、前者は組合用語、後者は経営者用語という違いがあります。労働者側から見れば、給料はもらうものではなく、勝ち取るものとなります。また、「人事」「労務」という言葉があります。一つの見方ですが、前者はホワイトカラーに関わるもの、後者はブルーカラー(工場労働者等)に関わるものと言えます。

■労基法の位置づけについて

労働法を取り上げていく、とお話ししてきましたが、「労働法」という名の法律はありません。重要な位置づけにあるのが「労働三法(労働基準法、労働組合法、労働関係調整法)」と呼ばれる法律です。特に労働の最低基準を定めた「労働基準法」は重要で、これに反する労働協約(労組と経営者が結ぶ協定)を結ぶことはできません。そして、労働協約に反する就業規則を定めることもできず、就業規則に反する労働契約を結ぶこともできません。例えば、1日の労働時間を8時間として就業規則で定めた場合、1日10時間という契約を個別に結ぶことはできないということです。これらの優位性は下記の通り表されます。

労働契約 ≧ 就業規則 ≒ 労働協約 ≧ 労働基準法

また、労働基準法を犯せば、経営者や人事関係者は処罰を受けることもあります。労働基準法に関する罰則は主なもので強制労働(1年以上10年以下の懲役)、中間搾取(1年以下の懲役)、給与の強制貯蓄、給与に男女格差を設ける(6ヶ月以下の懲役)等があります。「労働基準法違反は大したことがない」と高を括る方もいますが、懲役刑もあり決して軽くありませんので、その点を肝に銘じて頂きたいと思います。

2016年10月 開催

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