千年企業研究会

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第65回

労働関係調整法と個別の労働紛争について

■労働関係調整法(前回の復習と続き)

(労働紛争を解決する為の法律が労働関係調整法です。労働紛争は大きく、集団的労使関係と個別的労使関係の2つに分かれます。非上場の会社の場合、集団的労使関係よりも個別的労使関係をどう解決するのかが重要だと思います。
個別的労使関係で不満があった場合、まず相談が持ち込まれるのは直属の上司だと思います。したがって、その段階で解決する事が重要です。そこで解決出来ないと外部の団体であるサラリーマンユニオンや弁護士、労働基準監督署等に持ち込まれる事になります。
個別紛争の原因は①賃金、②休暇、③残業手当、④セクハラ、パワハラ、⑤採用・退職の5項目に分かれます。前回は②の休暇で終わっておりますので、③の残業手当から始めたいと思います。

■個別の労働紛争について

残業(経営者としての心構え)
(1)残業をさせない、しない。
経営者の中には労働者をこき使って労働生産性を上げようという考え方の人が少なくありません。しかしながら、私の50年のビジネス人生の経験からお話しすると、自分自身も残業をせず、労働者も残業させないという事が重要だと思います。最近の例で言うと、世界的に有名な金融会社O社のI社長は入社40年目で社長になった様ですが、I社長は入社以来、一度も残業した事がなくいつも定時で帰っていたという事です。残業が当たり前の金融業でありながら、全く残業しなかったI氏が社長に就任した訳ですが、I社長の素晴らしさはもちろん、I氏を社長にしたM会長の眼力も相当なものだと思います。
I社長の経営哲学には従業員をこき使うのを止めようというのが根底に流れています。O社ではノルマを達成する場合でも時間内で達成した人の給料を優遇してあげています。同じ生産性であれば早く終わった人を優遇するという考え方です。I社長の考え方で残業を無くすのはスキルではなく、哲学でありワークライフバランスが重要との事です。家庭崩壊してまで労働をする事はナンセンスです。労働はそもそも楽しい家庭生活を送る為の手段であるという事を認識しておくべきです。このような哲学が重要であり、残業をさせない、しないということを自分がしっかり受け止めておく事が重要です。

(2)残業をさせたら残業代を支払う。サービス残業をさせない。
経営者は残業をさせたら、必ず残業代を支払い、サービス残業をさせない事が重要です。必要がないのに残業しているなら別ですが、そんな事は殆ど無いと思います。必要があって残業している場合でも工夫をして、残業を縮減する事が重要です。 万が一、残業不払いで訴えられた場合、2年分の残業手当を遡って支払う事になります。また残業代の支払い判決が出ると同等額の付加金を支払うケースがあります。付加金は残業代と同等額なので2倍の額を支払うことになります。更にこれだけでは済まず、慰謝料も払わなくてはならない場合もあります。労働者が過労死や欝になった場合。慰謝料が億単位になることがあります。したがって、残業をさせない工夫が必要です。もしさせてしまった場合、必ず残業代を支払う事が重要です。
労働基準法では1日8時間、週40時間以上働かせてはいけないと明記しています。しかし実際は36協定がある為、1年毎に労働基準監督署に届け出を出せば、それ以上勤務(週15時間、1ヶ月45時間、1年360時間が上限)させる事が可能です。更に特別の事情(決算や特別セール等)があれば、実質的に残業は青天井になります。結果的に労働基準法は残業に関して青天井を認めていることになります。こうした問題を改善する為、政府は「働き方改革」で罰則付きで残業の上限を決めようとしています。現時点では、1か月当り80時間や100時間という案が出ています。この案では守れない場合、罰金が課せられます。
ところで、経営者や管理者に認定された人は残業の対象外となります。しかしどこからが管理者でどこからが管理者でないか線引きが難しく、管理者の例をあげると従来、本社の課長職以上や店長、人事部・係長以上や秘書課員等は全て管理職に位置付けられていましたが、現在は実態で判断される様になってきています。具体的には「名ばかり店長問題」というのがあり店長という肩書が付いていても本店に仕事をする時間の使い方が限定されていたりすると管理者とはみなされず労働者になります。なお、管理者であっても深夜残業に関しては残業代を支払わなければなりません。
私は銀行に入社して7,8年目に次長になりましたが、それ以降40年間以上残業代とは無縁になりました。因みに「名ばかり店長問題」に関して、法律ではないものの、年収問題があり、最低1,000万円位ないと残業代込の管理者の年収とは見做されず労働者と判断される事があります。とある会社の例ですが、10人程度の従業員を全て取締役に登記をしたケースがありました。取締役の為、残業代が支払われませんでしたが、実際には年収300万円程度の人がいた為、取締役とは見做されず、労働者と判断され、莫大な残業代を支払ったケースがありました。線引き問題に関しては総合的に考えることが重要です。
また、頭脳労働者が時間外手当の対象外となる事をwhite collar exemptionといい、法律が通る可能性があります。企画や研究職など頭を使う職種の場合、労働時間の線引きが難しく、認定された場合、時間外手当の対象外とする案が出ています。なお、年収に関しては900万円~1,080万円以上になる予定です。
この話には面白い話があり、連合と経団連、内閣で協議を行っている訳ですが、連合が内閣にwhite collar exemptionに104日の休日を強制にするという条件付きでOKを出したところ、参加の組合から連合はどちらの味方なのかとクレームが入り、連合の本部に傘下組合が赤旗を立ててデモを行ったという前代未聞の事件がありました。連合は民進党最大の支持基盤と言われてきましたが、政治資金規正法により、資金的な支援は希薄になってきているうえ、民共共闘等に関する考え方の違い等により、蜜月関係は曲り角に差し掛かっていると考えていいと思いますし、連合の存在意義そのものが問われているのではないかと思います。 なお、あくまでも私の個人的な見解ですが、white collar exemptionは、通るのではないかと考えています。

次回はT経営研究所のS社長の話から始めようと思います。

2017年9月 開催

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