千年企業研究会

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第67回

大企業の不祥事について思う

■「T社・N社・K社等の相次ぐ不祥事に思う」

 最近の大企業の不祥事については、T社やN社、K社等、枚挙に暇がないのが実態です。何れも日本を代表する企業ばかりであり、皆さん方も「何故こうした大企業で不祥事が頻発するのか?」という思いがあるのではないかと思います。今日は何故このような不祥事が起こるのかをお話ししたいと思います。
 ご承知の様に企業は会社法に準拠して経営を行っている訳ですが、企業には社会的責任(CSR:CORPORATE SOCIAL RESPONSIBILTY)が求められており、その事は会社法にも明記されています。それでは企業の社会的責任は何かと言うと、大きく三点になると思います。
(1)CORPORATE GOVERNANCE(企業の統治)
    『経営者、幹部社員たるもの、おかしいと思う事をおかしいと言う。』(勇気)
 GOVERNANCEは日本語で統治という意味ですが、企業においては如何に不正を防止するかが大事です。
 日本には従来から日本独自の企業統治の方法がありました。取締役の他に監査役という存在がおり、取締役の仕事を監査役が監視する事で不正を防止するシステムですが、残念ながら不祥事が続いた為、一部の企業ではアメリカ型の体制を取り入れる事になりました。これが委員会方式ですが、取締役を中心に幾つかの委員会を作り、社長を指名するのも委員会、社長の報酬や監査も委員会が行うというもので、取締役が中心になりGOVERNANCE体制を築くというものです。執行するのはチーフオフィサー(執行役)になります。因みに社長はCOO、会長はCEOと呼ばれています。こうした体制により、取締役が相互に監視する事になります。
 残念ながら、こうしたGOVERNANCE体制を敷いても不祥事が完全に無くなる事はありませんが、会社法ではこのようなGOVERNANCE体制を設ける事を規定しており、取締役は相互に監視する責任を持っています。代表取締役だけが取締役を監視するのではなく、相互に監視するという事です。なお、他に公認会計士や監査役等も監視する事になっています。
 (2)COMPLIANCE(法令、規則、ルールの絶対厳守)
     『後ろ指を指されるような事を絶対にしないと誓う。』(信念)
 (3)DISCLOSURE(情報公開)
     『企業経営に秘密は御法度、大切なのは真実を述べるオープンな心』(真実の探求)
 会社法に書いてあることは大事ですし、法律を守る事や情報公開も極めて重要です。
 しかし、本当に残念な事ですが、どんな体制を敷いても機能はしないと思います。アメリカ型を取ろうと日本型を取ろうと機能はしません。どのようなガバナンスを敷いても駄目だと思います。とてつもないワンマン社長が出たら、とても抵抗出来ません。
 重要なのは構成する一人一人が上述した(1)~(3)を持つ事です。
 福神商事㈱には関連企業が幾つもありますので、皆さんの中から、そうした企業のトップになって貰わなければなりません。もちろん、誰がどうなるかは判りませんが、トップになった時、一番大事なのは倫理観という事になります。トップは倫理観を持たないと駄目で、トップが倫理観を持たない企業は不幸と言うよりありません。
 トップが倫理観を持っていないと判断したら、会社のトップを挿げ替える事に会社法を応用すべきです。M社のO社長の例がありますが、トップを挿げ替える手段を会社法は示してくれています。会議から社長を外し、通常№2の人が議長となり、社長の解任動議を発議する事が出来ます。(弁護士等が同席して、文言等の法的な問題が無いかを精査する事が重要)この議題に関して社長の議決権を剥奪できますし、その場で賛成か反対かを起立や挙手により、社長を解任する事が出来ます。社長が「何故だ?」と言っても当然駄目で倫理観のない社長を首にする事が出来る訳です。
 また、N社の様な大企業がK社長という立派な経営者がいるにも関わらず、資格の無い人が車の点検をするといった不祥事が何故起こるのかと言うと、同社の場合、①取締役、②部課長(本社)、③工場(現場)という三つの組織があるのですが、夫々の組織が相互に意思疎通が無かったことから、こうした事態を招きました。工場(現場)の方から、「検査の人員が足らないので資格のある人を増やしてくれ。」と言っても部課長(本社)との意思疎通が無い為、増やして貰えなかった事が一因となりました。工場においては、否が応でも検査をしなければならず、資格を持たない人でも勝手に有資格者の印鑑を押してしまった様です。今回のケースでは、人員が足らない事をK社長に直訴する様な勇気をもった人が必要だったのではないかと思います。何れにしてもこうした問題は企業風土に関わる問題なので根が深いと思います。
 千年企業研究会の場で、こんな事を言うのも何なのですが、会社で出世を望んではいけないと思います。偉くなろうとか出世を目指した時に勇気や信念が無くなってしまうからです。しかし上さえしっかりしていれば、しっかり評価してくれるはずです。
 企業において、一兵卒から出世していく為には、業績や知識も必要だと思いますが、トップを選ぶ時には業績や知識の多寡は関係ありません。一番重要なのは倫理観、何より人格者である事だと思います。
 繰り返しになりますが、経営者において、最も大切な事は「倫理観」であるという事をしっかりと覚えておいて下さい。

■個別の労働紛争について:セクハラについて(前回の続き)

 セクハラに関して、コメントする事は余りありませんが、最近世の中ではセクハラに限らず、パワハラやオワハラ等、様々なハラスメントがあり、問題になっている様です。
 セクハラとは「相手の意思に反して不快や不安な状態に追い込む性的な言葉や行為」を指しますが、一般的には男性が女性に対して行う性的な嫌がらせという事になると思います。実際には何処までがセーフで、何処からがアウトなのか判断が難しいケースもあると思いますが、あくまでも被害者の主観で判断する事になりますので、注意して頂きたいと思います。因みに最近は女性のセクハラもある様です。
 ところで、テレビを賑やかした元衆議院議員のTさんのケースですが、あれは明らかにパワハラだと思います。「このハゲ―」と言って叩くのは男性に対するパワハラです。彼女は秘書だった男性から訴えられましたが、あれも男性の主観で訴えられたという事です。ハラスメントについては、あくまでも被害者の主観で判断されるという事を覚えておいて頂きたいと思います。
 また、オワハラとは学生に対して他の企業を受けさせないで、就職活動を終わらせる事です。
 悲劇なのはこのような事で本当に悩んで欝になったり、命を絶ったりすると民事だけでなく、刑事でも罪に問われるということです。またハラスメントには両罰規定というものがあり、訴えられて判決が出るとやった本人だけでなく、法人としての企業も罰せられと言う事です。残業問題で電通が訴えられた話がありましたが、当然、残業を命じた人も処罰を受けましたが、他に企業としても50万円の罰金を払う様、判決が出ました。50万円という金額は電通からすると大した金額ではありませんが、社長の責任問題にもなり、社会的な制裁を受ける事になりますので、やはり大変な事だと思います。

■採用

 次に訴えられる事が多い事案である採用についてお話ししようと思います。
 採用問題に関して、特に気を付けなければならないのは「取消」のケースですが、内々定の時、内定の時、採用・試用期間中の何れの段階なのかがポイントになります。内々定というのは面接が終わった後などに暗に採用を仄めかす様なケース。内定は文書で内定しましたと伝える事で、学校の卒業等を条件にする事が一般的です。内々定の時はまだしも、内定を出した後、「気に入らないから。」とか「来年景気が悪いから。」とかいった理由で、安易に取り消しをすると訴えられる可能性がありますので、訴えられないように慎重にすることが重要です。
 何れにしても取り消すには合理的な理由が必要です。合理的な理由というのは学校を卒業出来ないとか履歴書の中で偽り、例えばアメリカの大学を卒業した事になっていたのに、実際には1年間だけ出ただけで卒業証書をもらっていなかったとか、資格を持っていなかったといったケースになります。ただ、英語を使わない職場で英検の資格がなかったという事案がありましたが、その職場はドメスティック(国内的な企業)だった上に英検の資格が1級ではなく準1級だったという軽微なものだったので、採用の取り消しが無効になりました。基本的には、世間一般の常識と照らし合わせて判決が出る様です。

■退職

 退職の項目については、色々とお話ししたい事がありますので、今日は触りだけお話しします。
 退職には解雇と合意退職があります。(他に自己都合退職がありますが、最終的には合意退職になります。)
 解雇というのは会社が一方的に辞めさせる事です。自己都合退職は従業員が一方的に辞めるという事です。なお、会社が辞めないでくれと慰留しても、民法で14日目には辞める権利が発生します。また、勘違いされている方が多いのですが、取締役も同様にこの権利が発生します。
 従業員が会社に辞めると意思表示し、会社も了承すると合意退職になりますが、実際問題として自己都合退職であっても、会社が取り消す事は出来ませんので、99.999%合意退職になります。したがって、今では自己都合退職と合意退職はごっちゃになっており区別がつかない状況になっています。
 合意退職と解雇で最も異なる点は、失業手当の支給条件が違う事です。解雇という事由で職安に届け出を出すと失業手当の支給期間が長くなります。

 次回は解雇の問題に関して、私がS企業時代に経験した面白い話がありますのでお話ししたいと思います。

2017年11月 開催

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