千年企業研究会

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第68回

大企業の不祥事と働き方改革について

■今朝のニュースについて

 今朝(12月19日)6時のN社ニュースの中で、ショッキングな報道がありました。H社系列の販売店の店長が自殺をしたというものです。
 H社と言えば、T社、N社と並ぶ世界的な自動車企業です。そんな企業の不祥事ですから、かなりのインパクトがあります。自殺の理由は何かと言うと、過重労働であり、労災認定を受けたとの事でした。N社ですから、あまり辛辣な物言いはしておりませんでしたが、それでも厳しい論調であった事は間違いありません。
 H社にそういう事があったとの報道を受けて、「D社に続いてまたか!」と世間では話題に上がるものと思います。
 尤もH社本社は時代の流れを踏まえ、「残業を減らせ!」という指示を店長に出していたそうです。店長は本社の命に従って残業を減らそうとしたものの、減らす事が出来なかった。そこで、残業代の支給対象となる様な社員だけを帰して、その人達の仕事を自分で背負ったそうです。実際の残業時間がどの位だったのかは判りませんが、表面的な残業時間だけでも88時間になったとの事です。88時間残業しても尚足らず、家に持ち返って仕事を続けた結果、最後は欝になってしまい、それを事由として首にされてしまった。首になってから2~3ヵ月後、自宅の柱で首吊って自殺をしてしまったそうです。その後、店長の遺族が提訴し、最終的にH社が敗訴したというのが一連の問題の経緯です。
 非常に残念な出来事ですが、私はこの事を福井塾でしっかり話をしておかなければと思いました。昨日の役席会議の段階では、H社の事件を把握していなかったものの、働き方改革や本社の改善事項について話をしました。働き方改革と言っても、命令を間違えてしまうと、こうした悲劇が起こってしまいます。
 かといってH社の「残業を減らせ!」という指示が間違っていたかというと、決して、そうは思いません。正しいと思います。問題は実態を把握しないまま指示命令してしまうと、皺寄せが来るのは店舗だという事です。何かこういう事をしたいといった時に一方的に命令しただけでは問題は解決しないという事を今朝一番で改めて感じました。

■日本経済新聞の記事について

 H社の事件とも関連していますが、11月26日付の日本経済新聞の記事について、少し触れたいと思います。最近、働き方改革や生産性重視等について、様々な企業で工夫して取り組んでいるという内容です。業績評価の在り方で、総量成果重視型の評価からの離脱という見出しがありました。要は単純な総量成果重視型の評価では時代遅れで世界に太刀打ちできないとの事です。
 例えば、ある企業が総量で100億円の利益を上げ、別の企業が200億円の利益を上げているとします。200億円の方が凄いと考えがちですが実際は違います。判り易く説明すると、1日24時間働いて24の成果を上げる企業があったとします。別の会社は8時間働いて16の成果を上げました。この場合、どちらが良いか言えば、後者であり、24の成果を上げた企業の方がダメという事になります。何故なら16の成果をあげた企業は8時間しか労働しておらず、前者の2倍の生産性があったからです。つまり、総量成果重視型の離脱というのは生産性重視型へのシフトという事になります。
 記事の中では、4~5社の例が出ていましたが、ここでは、ごく掻い摘んで説明させて頂きます。
(1)O社のケース
 既に何度かお話をさせて頂いておりますが、O社のI社長は残業を経験せずに同社の社長になりました。おそらくはI社長が自らの経験を踏まえ、指導したのではないかと思いますが、同社では、短時間で成果をあげた社員を評価する仕組みを確立しています。
(2)メガバンクのケース
   ①会議のペーパーレス化
   ②話し合う時間の短縮
   ③顧客満足度を支店の評価項目の最重要項目とした。
   ④定時退行する人にポイントを付与
   ⑤社員一人当たり成果重視
   ⑥1時間当たりの成果重視
①・・・文字通り、紙ベースの資料でなくPC等を使って会議を行う事です。
②・・・日本では本当に会議が多く、打合せも多いです。欧米等のスタイルを見ていますと、全社員を集めるような大きな会議は殆どありません。中国や北朝鮮では大観衆の中で大演説になりますが、欧米ではあまり見られません。少人数でちょっと打合せをして終わります。自分に与えられている職務が決められていて、業務の範囲が決まっているので会議で確認することがないそうです。くどくど話さず、必ず結論を出すスタイルです。私も海外留学に行った際、そうした打合せの場に出くわしましたが、なるほどと思いました。また座らない。立って会議を行います。最近では座って会議をやるのを禁止している会社もあります。
③・・・銀行で支店の評価をする場合、業績はもちろんですが、事務効率やZ運動で何点取ったか等、本当に多岐に亘っています。それでも不十分だという事で、このところ、顧客満足度を重要な評価項目に入れ始めました。具体的にどのようなものかは判りませんが、その店舗において、お客様が満足して帰るかどうかを確認して評価しています。今メガバンクはそのようなことを実施しています。あまり大きなことは言えませんが、本来、お客様が満足する様な営業をしているかどうかを重視するのは当たり前の事であり、成果は結果論です。
 本社で評価されるのは従業員の満足度をどこまで高められるかという事です。そういう視点に立ったら「お前、今日残業して仕事しろよ。」等と軽々に命じる事は簡単には出来ません。残業だけではないですが、色々な角度から、様々な事を考えなければならないのです。本社はそういうようなことを視点にして、店舗はお客様が満足しているかどうかを評価の重要項目とします。
④・・・残業手当は残業をした人には必ず支払わなければなりませんが、状況によっては、非常に不公平だと思います。例えばデータを作る際、仕事が出来る人は直ぐに作れますが、出来ない人は幾ら経っても出来ません。日頃から物事を本質的に考えていない人は考えることに時間が掛かってしまったりします。常に物事を本質的に考えている人は直ぐに出来てしまいます。効率的に仕事をしている人が17時に帰っているのに、効率的でない人がいつまで経っても終わらず、残業代を付けているのは、不公平です。
 そうした実態を踏まえ、残業をせず、17時に帰った人にポイントを付与する制度を取っているそうです。ポイントがどの様に利用できるのかは把握しておりませんが、定時退行する人にポイントをあげている様です。その事をまねするのではなくヒントにして働き方改革の参考にして頂きたいと思います。
⑤・・・至極当然な事ですが、現実問題として、一人当たりの成果をどの様に判断するかが難しいと思います。
⑥・・・同様に何をもって、1時間当たりの成果とするかを決めるのが難しいと思います。
 何れにしても、先月26日に新聞を読んだ際、どうしても触れておかなければと思い、お話をさせて頂きました。

■解雇について

 先々月からどのような事を勉強してきたかというと、経営者が従業員から訴えられるケースにはどの様なものがあるかという事を学んできました。
 個別紛争の原因は①賃金、②休暇、③残業手当、④セクハラ・パワハラ、⑤採用・退職の5項目に分けられますが、これまで採用迄、説明をしてきましたので、今日は最後の退職について、話をしたいと思います。
 退職の多くは普通円満退職であり、従業員が辞めると言ったら、経営者は断る事は出来ません。しかしながら、退職の中でも解雇のケースでは、気を付けて対応しないと訴えられる事があります。解雇に関しては、福神商事㈱の場合、就業規則62条に記載されています。
①勤務態度著しく不良。
②接客態度が著しく悪くお客様に不快感を与える。
③他の社員との協調性がない。
④身体・精神の障害等。
⑤事業の縮小等。
⑥天災事変等。
 といった事が書かれていますが、問題は訴えられてはいけないという事です。
 就業規則に書かれているから解雇をしても問題ないかという事ですが、H社の例で言えば、遺族が涙ながらに訴えていましたが、H社のせいで欝になったものの、就業規則に解雇要件が記載(当社の例では就業規則62条④)されていたので、堂々と首を切ったのではないかと思います。しかしながら、その後の調査により、店長が労災保険の適用になり、それをきっかけに事件の真相究明が始まった様です。労災保険が適用されると、首になった時点から給料が保障されます。民事刑事の裁判がどうなったか判りませんが、最終的には億単位の損害賠償 請求額になると思います。そうした現実を考えると、解雇要件に該当するからと言って、簡単に首を切る事は出来ません。
 社会通念上、止む無しと思われるケースでは、何時何分にお客様に文句を言った事がこの項目に該当するといった内容の反省文を書かせたり、反対にある女性があなたにこのような事を言われたという内容の証拠文を書いて貰ったりした結果、こうした証拠品が貯まると解雇にする事が出来ます。
 ただ、解雇も即解雇にすると紛争になります。解雇予告手当1ヶ月分を振り込まなければなりません。最もリスクの無いケースは、向こうから辞める様に仕向ければ、訴えられるケースは殆どありません。例えば、賞与を減らして自分から辞める様に仕向けるとか、今辞めれば円満解決にするとかいった形にしなければなりません。懲戒解雇は別ですが退職金は払わなければならないです。62条を盾に会社から一方的に解雇をする事は基本的には可能ですが、十分に気を付けなければなりません。

■懲戒解雇

 懲戒解雇は処罰の一種になります。一番判り易いのは、着服等のケースです。本人は懲戒解雇、管理者は管理責任を問われます。処罰をする場合は懲罰委員会でこういう事案がありますよという事で、問題を起こした本人以外を懲罰委員会に掛けます。もちろん、その人達は懲戒解雇にはなりません。ではどういう処罰の種類があるのというと①譴責、②減給、③出勤停止、④諭旨解雇。⑤懲戒解雇になります。1つずつ解説することはないと思いますが①は呼んで怒るという事であり大抵始末書を徴求します。因みに始末書と顛末書は似ていますが、始末書には謝罪の言葉が入っており、顛末書には謝罪の言葉が入っていません。②は給料を減らす事であり、1ヶ月分の給与を20日で割った金額の半分迄減らすことが可能です。③については出勤が停止されるとその分の給料が入らなくなります。何れにしても管理者の処罰では③までが限度だと思います。因みに④は退職金を払って解雇をすることです。

 次回は整理解雇から入りたいと思います。

2017年12月 開催

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