千年企業研究会

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第72回

集団的労使関係について

■集団的労使関係について「①経営対組合」

 集団的労使関係について、本当に細かく話をしていったら、1年は掛かってしまうと思いますが、今回は簡潔にお話しする事にしたいと思います。というのも「集団的労使関係」の話というのは、基本的に労働組合に対して、経営がどのように対応していったら良いかという話が中心になる訳ですが、福神商事を始めとするグループ企業には組合がない為、現実問題としては、あまり意味がないからです。もちろん、将来的に労働組合が出来る可能性もありますが、今の状況を考えると労働組合が福神グループに出来る事はまず無いと思っています。もちろん、出来たら出来たで仕方ありませんが、兎も角労働組合が出来たらどのように対処していくか、話をしていきたいと思います。
 個別の労使関係については、労働基準法が準拠法となりますが、経営と組合の関係に関しては、労働組合法と労働関係調整法に基づいて決める事になります。
 ところで、経営と労働組合の話し合いの一形態として、「団体交渉」があります。これは憲法で保障されているものなのですが、経営陣は労働組合との大人数での話し合いを嫌います。したがって、実際にはどこの企業も団体交渉による話し合いはしません。
 その代わり、大半の企業では「経営協議会」というものが開催されます。経営協議会というのは、経営側も組合側も5~6人位のメンバーが選定され、お互い書記を任命し、後で議事録を合わせます。因みに経営協議会の議長については経営側から選びます。大抵1時間位、話をした後、組合側に議長が話をして終わります。
 どこの企業も経営協議会は殆ど同じで議題は大体決まっています。議題は①春闘、②協約改訂、③個別労働問題、④経営政策の4つになります。それ以外にもない訳ではありませんが、大きく捉えるとこの4つで、特に重要なのは①春闘と②協約改訂です。
 ①の春闘についてですが、日本においては、基本的に春に賃金改定を行います。個別企業でも春の時期に賃金改定が行われます。おそらく日本の大企業の99.9%は春に賃金改定が行われるのではないかと思います。賃金が何%上がるのかという点については、前年の12月から1月にかけて、労働組合の上部団体である「連合」が大枠を固め、その数字に基づいて、連合と経団連が話し合いをします。そして何%かを決定し、それが各企業、労組に下りてきますので、それを元に交渉します。上部団体が3%だからといって、自分の企業も同じ3%で要求する必要はありません。個別で判断し、決めていけば良い訳です。今の企業は団体交渉をしませんので、経営協議会で春闘は決まります。また回数も大体3回で決まります。1回目は組合側が提案します。2回目は経営側が組合側の提案に対するコメントを出します。そして、3回目で結果を出します。
 基本的には事前にアンダーで組合側と経営側が調整を行ったうえで、組合案を作ります。組合側は執行委員会や中央委員会等で組織決定した後、経営に提案を行う訳ですが、事前に人事と擦り合わせて作っていますので、当然、早期に決着を図る事が出来ます。
 ②の協約改訂についてですが、労働協約に関し、企業と個人で結びつけているものを就業規則と言います。労働協約は個別企業との話なので労働基準法を超えたものを決めることになります。例えば労働時間を8時間から6.5時間にするとか福利厚生を変えるとかを決めます。話し合って決めるとお互いに協約を締結します。締結前には調印式を行います。これが協約改訂における経営協議会です。これで就業規則を決めて社員に明示します。
 ③の個別労働問題については、個別の問題を話し合うことになります。どこどこ支店の残業時間が多いとか個別のセクハラやパワハラの話でも構いません。あくまでも個別の話になります。
 ④の経営政策については、例えば「なんとか政策運動」を実施する事になった場合等に経営協議会に付議する事になります。経営政策を経営陣は勝手に下ろす事は出来ません。普通、経営協議会にかける場合には、経営陣は事前に取締役会を開催したりして、機関決定しておきます。その後、組合と協議をする訳ですが、経営陣は普通、一旦決めた事を下ろす様な事は出来ません。既に取締役会や常務会等、様々な機関で決定しているものを覆す事になってしまう事もあり、経営側は威信にかけても通す事になります。一方、組合はどんな事でもいちゃもんをつけてくると思いますが、どう乗り越えるかが大変になります。
 こういった議題を話し合うのが経営対組合という事になります。

■集団的労使関係について 「②政府(経団連)対連合」
 経団連は東証1部上場企業の経営者を中心として、財界からの提言及び発言力の確保を目的とした組織ですが、元々、組合対策等の一環として発足した経緯もあります。因みに昔は組合対策を専門に扱っていた団体がありました。日経連と言います。経済関係の団体は経団連と日経連、他個別の団体がありました。一方、組合サイドには総評と同盟という二つの組織がありました。二つが合併した連合は組合員800万人を抱え、ある程度強い組織になりました。なお、経営側も組合側と対抗するため経団連と日経連が合併し、日本経済団体連合(経団連)になりました。因みに経団連は日本商工会議所、経済同友会と並ぶ「経済三団体」の一つになっています。
  ところで、経営の神様と言われている松下幸之助さんは、社長や役員、経営陣になった時に、どういう知識や能力が必要かといった様な事は教える事が出来ないと言っています。兎も角、どんなものでも知識として吸収したり、様々な経験を通して立派な社長になっていく。これを学んでおけば良いというものではなく、色んな知識が大事ですが、何の知識が一番大事だとかはないと言っています。勉強して社長になるものではないとの事です。基本ベースで会社法や労働法がこういう事ですよという事を私は言っていますが、他にもあらゆる雑学を覚える事を続けていくうちに何が大事なのかがわかってくると思います。そういう意味では総評と同盟も雑学として覚えておいた方が良いと思います。
  昔、労働組合のナショナルセンターというものがありました。総評(官より)は旧社会党、共産党を背景にしており、同盟(民より)は民社党系でしたが、現在はこれが合併して連合となっています。政治も共産党以外が合併して民主党になります。現在は立憲民主党、民進党、希望の党、自由党に分かれています。労働組合のナショナルセンターの動きと政治の動き、政党の動きはこのようになっています。今後も合従連衡があると思います。元々彼らはなんでこういう労働組合に左右されるのかというと、選挙に勝たなければいけないため組合が支援してくれるかどうかで受かるかどうかが決まるからです。
 パナソニックの労働組合員にどの政党に票を入れるのか聞いたところ5割が自民党になってしまったそうです。昔は肉体労働者や課長以下の組合員は民社党や社会党を支持していました。大きなうねりの流れがあって日本自体が右傾化してきているのではないかと思います。ナショナルセンターは歴史的な意味で大きな流れがありました。これは常識中の常識なので覚えて欲しいと思います。
 この同盟というのが民主的労働運動と言って日本の民間企業の場合には同盟系の組合員が増えて言ってほしいというのが経団連なり政府の考え方でした。総評は一般の企業は非常に嫌っていました。共産党の中でも一番左がかった者がいて企業を破壊して、それで権利を獲得しようという考え方があります。民主的労働運動を指向している同盟は労使協調路線になります。日本が戦後に高度成長した背景には企業内組合を非常に大きなうねりの中で民主的労働運動を盛んに支援して、労使協調路線を日本の国に確立したというのが背景にあります。
 松下幸之助さんは組合が非常に大事だと言っています。組合との話し合いは対立と調和だと言っています。これは松下幸之助さんも非常に苦労したものと思われます。対立と調和というのは、言葉を変えると企業というのは布の縦糸と横糸と言われます。縦糸が経営、組織になります。横糸が組合になります。布は縦糸だけでも弱いです。横糸だけでも駄目です。松下幸之助の対立と協調というのは布の縦糸と横糸だと言われています。企業は縦糸だけでは駄目で横糸があるから強くなれると言われています。経営にしてみたら組合がない方がいいと思いがちですが組合があるからこそ助けられることがあります。

 次回は集団的労使関係の「経営対組合がもめたら(労働委員会へ)」から話をしたいと思います。

2018年4月 開催

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