千年企業研究会

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第73回

集団的労使関係について②

■集団的労使関係について②

 集団的労使関係は基本的には個別的労使関係とあまり変わりがありません。強いて言えば、訴えるところが個別的労使関係より少なく、弁護士や上部団体又は労働委員会に駆け込む位しかないという事です。揉めた場合は非常にややこしくなる可能性があります。組合員が個別的な悩みを労働組合に訴えてきた場合、訴えてきた本人に問題があれば取り上げません。しかし取り上げた場合には、経営側に申し入れをして交渉になります。
 会社との話合いでは、組合は労働三権を持ちだして交渉になります。この申し入れを会社側が突っぱねられるかというと突っぱねる事は出来ません。何故なら、団体交渉権は組合に認められた正当な権利だからです。
 ただ、大企業の組合が団体交渉権を大上段にかざして、経営側に団体交渉をせまるかと言うと、そうした事は殆どありません。何故なら、社内の経営協議会にかけてしまうからです。基本的には組合と経営が同じ人数で話をします。余程の事が無い限り、企業内で解決をします。というのも、あくまでも当該企業の内部の問題であり、第三者に迷惑が掛からないので労働委員会も通常は相手にしません。企業内の争いというのは自己責任なので、両者が話し合いを続けるしかないのです。
 それでも万一、解決しない場合、労働委員会にかけこむ事になりますが、民間企業が訴える事は殆どありません。実際に労働委員会を利用するのは公益企業になりますが、公益企業も殆ど使っていないのが実態です。レジュメに斡旋、調停、仲裁と書かれていますが、死語と言っていいと思います。知識として、「過去にそういう時代があったね。」と知っておいて頂きたいと思います。因みに公益企業とは公衆の日常生活に不可欠な事業を営む企業を指しますが、現在では殆どが民営化されていますので、ここで言う公益企業とはかつての三公社五現業という事になります。三公社とは日本専売公社(民営後は日本たばこ産業、塩事業センター)、日本電信電話公社(民営後はNTTグループ)、日本国有鉄道(民営後JRグループ、日本国有鉄道清算事業団)になります。また、五現業は郵政・造幣・印刷・国有林野・アルコール専売の五事業になります。
 昔は国鉄が賃上げ等を目的として、ストライキを実施する事がありました。国鉄がストライキを断行すると、電車が動かないので、通勤や通学に大きな支障が出る事になります。これが社会的に批判を浴びました。そうした経緯があり、早く問題解決を図りたく、第三者の労働委員会に訴えて決めることになりました。
 労働委員会では、レジュメに記載された斡旋や調停、仲裁が出てきます。斡旋は強制力がなく斡旋員が和解案を提案することになります。これで駄目であれば調停になります。調停も強制力がなく調停委員会(公労使の三者構成)が和解案を提案します。これでも駄目であれば仲裁になります。仲裁は仲裁委員会(公益委員のみ)が仲裁案を出します。強制力があるので拒絶する事は出来ません。このような取り組みにより、労働争議を収拾してきました。
 しかし、最近はそうしたケースは激減しました。何故なら、三公社が民間企業になってしまったからです。国鉄もJRになってからは無いと思います。もちろん、民間でもあまり無いと思います。
 ところで、過去に組合が経営陣に対して恐喝紛いの事をして脅す事がありました。自分達の要求を通す為です。今はそういう事は無いと思いますが、組織対組織だと彼らは常套手段として使います。ここで重要なのはそういう事も有り得るんだという事を覚えておいて頂きたいと思います。「人間は性善説でそういう事はないよ。」とお思いになるかもしれません。確かに社長と従業員といった縦の組織だとそういう事はありません。しかし、何かしらの問題で対立したりすると、組合は自分達の要求を満たす為に手段を選ばない事もあるという事を頭の片隅に入れて頂きたいと思います。

 レジュメにも記載してありますが、組合の体質とは、
  (1)甘くすると組合はつけあがる。
  (2)彼らの要求は際限がないと心得よ。
  (3)しかし、完全に敵に回すと、経営はできない。このバランスが大事。
  (4)組合は一つの組織であるから権限を持ちたがる。・・・一番は人事権。

 組合は意外と官僚的です。経営とは比較にならない位、官僚的です。組合は縦割り社 会ですが、一歩間違えれば、その組織に居られなくなります。社会的に見て、共産党的 な縦割りの組織は委員長に逆らったら大変な事になります。しかし組合は経営と対峙し、 一致団結して経営に向かってきます。そういう事を知って頂きたいと思います。
 昭和50年位にN自動車の組合にSさんという委員長がいました。N自動車の中で天皇と言われていたそうです。役員人事は経営権の最たるものですが、Nでは自由に行使することが出来ませんでした。何故なら、組合が色々と邪魔をするからです。
 ライバル会社であったTと決定的な差がついた時、N自動車はプロの経営者であるC氏を招聘しました。理由はN自動車の経営陣が組合を御しきれなくなったからです。
  過去にイギリスかフランスに新たな工場を作るといった時に経営陣がS天皇の指示に従ったそうです。Sさんは立派な人ですが、Sさんのその後はどうなったのかというとスキャンダルで哀れな末路を辿っています。

  (5)人事権は経営権の最たるもの。毅然たる姿勢が大事である。
  (6)実際の労使関係・・・経協議長(経営側)と労組・委員長でほぼ決まる。

■私からのアドバイス
 社長たるもの従業員に働いて貰って、企業は成り立っている事を絶対に忘れてはいけません。従業員の幸せを一番に考える事が重要です。したがって、自分がその企業の労働組合の委員長になったつもりで経営に当たる事が重要です。労使協調路線でないとうまくやっていけません。
 大事なのはそうなる前です。今、福神グループには組合がありません。皆さんの中には、組合が出来た方が良いのではないかと考えている人もいるかもしれませんが、組合は幾ら民主的な労働組合と言っても、かつてのNの様になってしまいます。
 ここにいる人達は自分の部下に不満を抱かせないようにする事が重要です。実際の話、過激な組合を作られたら悲劇です。企業が潰れてしまいます。
 何れにしても皆さんは従業員の幸せを思って経営にあたって頂きたいと思います。

最後に復習として労使の各々の権利について整理をして終わりにしたいと思います。
労働三権・・・団結権、団体交渉権、団体行動権(ストライキ権)
経営三権・・・業務命令権、人事権、施設管理権

 次回は労働法のレジュメ(6)の現代日本の労働課題から話をしたいと思います。

2018年5月 開催

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