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第75回

範囲賃金とアメリカの労働制度の特色について

■範囲賃金について(日本の雇用制度の特徴について)

 最初に職位別賃金体系の範囲賃金の話をしようと思います。範囲賃金には二通りの捉え方があります。「資格制度に基づく範囲賃金」と「賃金の範囲」という二つの側面です。
 賃金の範囲とは労働保険(労災保険、雇用保険)対象の範囲が一般的です。言うまでもなく、労働保険対象賃金の範囲には給与(※給与;会社側の表現、賃金:労働組合側の表現)を始めとしてあらゆる物が入りますので、逆に入らないものを覚えて頂いた方が良いかもしれません。入らないものは役員報酬、結婚祝金、弔慰金、災害見舞金、出張旅費(実費精算的なもの)等になります。
 雇用保険に関して、特に役員の方に気をつけて貰いたい事があります。万一、役員をしていた会社が潰れた場合、社員には当然、失業手当が出ますが役員は出ません。なぜなら役員等(監査役、執行役)は従業員ではないので雇用保険料を支払っておらず、失業手当が出ない(注:執行役員等で労働保険を支払っているケース有り)という事です。労働保険上の賃金の範囲をしっかりと確認しておくことが重要です。
 次に能力主義における資格制度の範囲賃金について話をしたいと思います。一般的に、どこの会社でも職位に基づく手当を支給しています。例えばある企業で係長、課長、部長という職位があり各々手当を支給する場合に、その手当はある程度の幅を持たせるのが普通です。この幅が広すぎると係長から課長に昇進した場合、あまり手当が払えないという現象になることがあります。理想的には各々の職位の手当は一律で決め、それぞれの昇格や昇進時に例えば付与手当は一律5万円、課長は10万円、部長は20万円と決められれば、昇進時にその手当分の給与アップが行われ、能力主義に基づく遣り甲斐に繋がるわけです。手当に幅(範囲賃金)を持たせると場合によっては、職位の変更があっても思ったより上がらないという現象になり、昇進の効果が薄れるわけです。
 次に蛇足ですが管理職における最適な管理人数について考えてみましょう。経営学の言葉にSpan of Controlという用語があります。まさに管理における最適人数とでも訳せるかと思いますがこれは5~6人もしくは7~8人と言われています。
 ですからある程度の人数がこの人数を超えてきたら、必ず一人の管理者が必要であるという事です。更に係長の数がこの程度を超えてきたら、課長を置く必要があるという事です。部下のいない課長がいたり、一人の課長が100人もの部下を持つという事がナンセンスであるという事を覚えておいてください。

■アメリカの労働制度の特色
 (1)年功序列や終身雇用よりも転職
 一般的にアメリカでは年功序列や終身雇用といった考え方は日本ほどではありません。どちらかというと給与の上昇を勝ち取るには一番手っとり早い方法は転職のようです。
 (2)アメリカの労働組合の特色
 アメリカの雇用制度の特徴として産業別組合があります。産業別組合は政治色が強いのが特長です。一方、日本の企業内組合は労使協調、生産性向上が特徴です。日本は企業内組合が主体なので正社員にとってはメリットがあります。しかし、派遣やパート等非正規社員に対しては気を使わない傾向があります。概して、アメリカの組合は社会的弱者に対して力を発揮します。アメリカにおいては、企業内での深刻な対立はあまり聞いた事がありません。しかし政府と産業別労働組合との争いは熾烈を極めます。

 次回は私の体験に基づくアメリカの賃金制度の話をレジュメに沿って進めて行きたいと思います。

2018年7月 開催

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