千年企業研究会

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第78回

アメリカの人事制度について

■アメリカの人事制度について
 今日はアメリカにおける人事制度が一般的にどのようなものなのかという話をしたい と思います。
 ところで、アメリカとドイツ、そして日本の人事制度(準拠する法律等として重視しているもの)については夫々かなり特徴的な違いがありますので、先ずはその辺りから話を進めていきたいと思います。
・アメリカ  労働者との個別契約・・・労働契約法
・ドイツ  組合員との契約・・・・・労働協約
・日  本  社員集団との契約・・・・就業規則 ← 労働協約 ← 労働基準法
 因みにこうした内容は大企業における一般的なケースであり、中小企業等においては 異なる場合もありますので、お含み下さい。
 どちらかというとドイツは労働協約に基づく訳ですが、経営政策の策定にあたっても「共同決定法」という法律があります。これは一つの政策を会社が策定するにあたり、労使が集まってお互い納得のいく政策に仕上げていこうというもので、組合や会社が一方的に検討するのではなく、双方が話し合って決めます。
 日本の場合は共同決定法の様な法律はありませんが、経営協議会という場があります。
 本来、労働組合法に基づく団体交渉権というものがあり、組合は団体交渉権により話をすることが出来る訳ですが、日本の経営者は団体交渉を嫌います。仮に団体交渉を行うにしても少人数で行ったり、経営協議会という名称で検討することが一般的です。 アメリカにおいては、共同決定法という法律はなく、また団体交渉という事もあまり聞きません。
ここで、夫々の国で労使の力関係がどうなっているか表にすると、
         経 営   組 合
アメリカ      〇     ☓
ドイツ       △     〇
日  本      △     △
    ○は強い  ×は弱い  △は普通
ということになります。

■G会長逮捕とガバナンス体制について
 今朝、N社のG会長が逮捕されるというショッキングなニュースが飛び込んできました。今日の話と関わってくるので、少し話をしたいと思います。
 現段階では詳しい事は判りませんが、N社に抑止力が無かった為にこのような事態を招いた事だけは間違いありません。G会長は20年間、N社のトップに君臨してきた訳ですから、どこかの段階で全て自分一人で決められる体制にしてしまったのだと思います。やっぱり、ガバナンス(企業統治)が重要です。
 もちろん、経営者が悪さをしないように監査役がチェックする必要がありますが、今回の様に海外に自分の自宅を作らせたりした場合、どこかで経理の誰かが気が付いている筈です。そういう意味では、明らかなガバナンス不足だと思います。因みにガバナンスで意外と大きな役割を担っているのは組合になるのですが、G会長がドイツ出身だったらこのような事にならなかったのかもしれません。フランスではどのような事になっているのか判りませんが、誰も気が付かなかったのかという話になります。仮に申告不足が50億円としたら大変な金額です。幾ら5年という期間に亘っていたとしても、経理が支払う訳ですから、誰かがおかしいと言わなければならなかったと思います。
 日本では意思決定を取締役会や常務会という機関で決めるケースが大半です。仮に会社に組合があって意思決定をする場合には、経営協議会に掛ける必要があります。おかしな点があれば、組合側が経営側に説明を求める事になるので、何か一つの政策を決める場合でも経営協議会に掛けるという事はそれなりにガバナンスが効いているという事になります。つまり、日本においては、良し悪しは別として、経営協議会が相応の機能を果たしている訳です。
 それ以上にドイツでは共同決定法が機能を果たしています。ではドイツには不祥事がないのかというとそんな事はありません。もちろん、日本においてもN社やT社、O社の様に不祥事は枚挙にいとまがありません。最終的に重要なのは経営者の倫理観になりますが、一人に権力が集中していると、どうしても今回のようになってしまいます。何れにしてもアメリカやドイツ、日本における人事制度のメリットやデメリットを理解する事で、どういうあり方が望ましいか、学んで頂きたいと思います。
 ところで、これまでの話で皆さんは組合が凄いとお思いになられているかもしれませんが、N自動車において、かつて組合が極めて強かった時代がありました。組合があまりに強かった為、当時の会長、社長よりS氏という組合の委員長の方が権力を持っていました。S天皇と言われていた程です。例えば、フランスに工場を作ろうという事を常務会で決定し、組合に説明に行くと、S天皇の一声で、イギリスに工場を作ることになってしまう位の権力を持っていました。全く理解できない事なのですが、当時は役員の人事権も持っていた様です。
 けれど、最終的には女性問題の不祥事で失脚したと聞いています。その結果、N社労組は弱体化していく訳ですが、バブルの崩壊に加え、過激な労組に足を引っ張られていた事等もあり、やがて、N社は赤字で倒産寸前までいきました。その後、G社長が登場し不採算の工場を閉鎖したりして、大胆なコストカットによる改革をしました。トップが変わるとこんなに変わるものかと感心したものです。しかし年月が経ち、今回のような事になってしまいました。
 改めて感じることはガバナンス体制が大事であり、更に重要なのは経営者の倫理観だという事です。

■アメリカの賃金制度と働き方の特徴について
 かなり横道に逸れてしまいましたが、ここから本来のレジュメの内容に入っていきたいと思います。
 日本においては、就職と言っても就社というべき実態にありますが、アメリカでは文字通り就職になります。管理職や専門職、技術職等、コース別採用が基本になっており、賃金についてもコース別になります。つまり、最初から管理職や営業職、技術職等のコース毎に採用活動を行う訳です。
 日本では就職活動で様々な会社を受ける際、人事や経理といった職種の希望を持った学生がいるかもしれませんが、実際に希望が通るかどうかは判りません。けれど、アメリカでは入る時点で、経理をやるか総務をやるか等、最初からコースが決まっています。
 日本では研修が終わって最初に配属される時は悲喜こもごもになります。何故かというと、日本の場合、希望を言っても聞いてくれない事が多いからです。配慮する事があっても、精々家から通えるかどうか位だと思います。出身地もあまり関係ありません。アメリカの場合、経理で入社したのに、経理に就く事が出来なかったら、問題になってしまいます。
因みに日本でもS社というメーカーでは、職務別採用を行っています。経理だと簿記の資格を持っている人を採用したりします。応募の段階で、機械の開発にあたる技術者だとか経理等にコースが分かれており、自分で選ばせます。誰が考えてたのか分かりませんが、アメリカと同じ形式で非常に合理的だと思います。
 アメリカの仕事は職務基準書(マニュアル)が基準になります。職務規定が細かく決まっています。上にいく程、大雑把になり、下にいく程、細かく決まっています。例えば、一つのフロアーを二人で掃除をする場合、日本では片方が早く終わると、他の人が手伝ったりしますが、アメリカでは自分の持ち場以外は掃除をしてはいけない事になっていたりします。
 ハンバーガー店でもマニュアルが決まっており、お客さんが来ると同じ言葉で接客します。日本の場合はマニュアルにない事をする事が可能であり、色々と工夫した人がカリスマになったりしています。アメリカでは脱マニュアルというのが流行っているそうで、「マニュアル通りにやらないと罰する。」というのはやりすぎだと考える様になってきている様です。
 今日はレジュメの1の(2)まで終わりました。次回はレジュメを終わらせたいと思います。

次回は私が3ヵ月受けた研修の話をします。

2018年11月 開催

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