千年企業研究会

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第79回

アメリカの人事制度について②

■アメリカの人事制度について
 今日は年内最後の千年企業研究会になります。前回からアメリカの人事制度の話をしていますが、随分前にお渡ししたレジュメに沿って、職務別賃金やコース別賃金の話をしていきたいと思います。
 ただ、今日もいつも通り、漫談になってしまうものと思いますが、この時間は「自分が社長になったら・・・。」という観点で幅広い知識を取得する事が必要との認識でお聞き頂きたいと思います。何故、アメリカの話をするのかというと、アメリカで起こった事がその後、20年~30年経つと、日本でも起きることが多く、参考になる事が多いからです。
 言うまでもなく、アメリカは先進国の中でも世界のリーダーであり、多分、皆さんが一つの企業を経営していく事になった場合、今以上にアメリカで起きた事を取り入れる事になるのではないかと思います。しかしながら、アメリカが全て正しいとは限りません。現実がこういう風になっているという話をしますので、皆様方が今までの経験を通して、後は判断して頂きたいと思います。そんな訳で今日も淡々とアメリカではこうでしたという話をしていきたいと思います。
 因みにレジュメのコース別賃金というのは正にアメリカの特徴であり、日本は就職と言っても、実際には就社という色彩が強いと思います。アメリカではあまり会社に入るという意識はなく、自分がその職務に就いたという認識が強いと思われます。 尤もこうした内容の前提は大企業であり、業種や規模によって全然違うものの、当時はこの様になっていました。
 コースは管理職、営業職、専門職、新商品開発職、事務職等という分け方になっています。また事務職はここからさらに細分化され会計(経理)、人事、企画、法務、広告宣伝、マーケティング等に分かれていきます。日本では就職した時点で、どの職務につくか、会社に決められてしまいます。アメリカではコース別の専門知識があるかどうかで採用が決まります。そうした事から、日本は就社でアメリカは就職という事になる訳です。
 日本では就職(就社)すると、多くは社長や役員を目指す事になります。したがって、会社は可能な限り、社長等になる期待感を失わせない様にしています。経営陣になる為には専門的な知識というより、広く一般的な事が分かっている事が重要なので、日本においては総合職(generalist)の人材が求められる事が多いのです。
 一方、アメリカでは最後にとび抜けた人がgeneralistになればいいという考え方です。残りはspecialistになります。例えば、昔は殆どの銀行で、人事、企画あるいは業務といったセクションで相応の業績を上げた人が頭取になる事が普通でしたが、今般、M銀行ではIT部門出身の人が社長になったそうです。フィンテックやキャッシュレス時代に突入し、ITが極めて重要になってきたのでこのような事になったそうです。一時、海外進出がピークだった頃には海外方面に詳しい方が社長になっていましたが、現在はITを重視しているので、IT部門のspecialistの方が社長になった訳です。日本も大分アメリカに近づいたと言えます。

■アメリカの学歴について
 学歴は高卒、専門学校卒、大学卒、大学院卒と分かれていますが、アメリカでも学歴は非常に大切です。
 アメリカにはクラーク(clerk)とオフィサー(officer)という階層がありますが、クラークとオフィサーでは処遇が全く異なります。オフィサーは秘書や個室が付いているのが当たり前であり、クラークが1万人いたら、オフィサーが100人か多くても1000人いるかどうかという割合になります。したがって、一部の人は当然、オフィサーを目指す事になります。アメリカでは一旦会社入ったら、完全な実力主義になります。入ったら、「よーいドン」でスタートラインは一緒になります。なお、どうしてもオフィサーになりたい人は大学院を卒業して入社する事を目指します。
 私は当時、アメリカの大学院は本当に凄いなと思いました。アメリカでは、通常、ビジネススクール(と呼称している大学院(修士))に入ります。しかしながら、ビジネススクールでMBA(Master of Business Administration)を取らなければ卒業しても何の意味もありません。
 ところで、MBAの取得者でもオフィサーに1年でなる人もいれば何十年も掛かる人もいます。これが実力主義という事です。高校を卒業して、独学で資格を取りオフィサーになる人も多数います。まさに実力主義です。
 大学院にはロースクールという分野(司法試験の合格を目指す大学院)もあります。10年前に日本でも初めてこの制度が出来ました。それが法科大学院制度です。もちろん大学卒業前に弁護士資格を取ってしまう人もいる反面、ロースクールに入ったからといって必ず弁護士になれるのかというとそうではありません。あくまでも司法試験(国家試験)に合格する事が要件です。これは日本も同じです。又、アメリカでは弁護士の資格を取ると、何人かの人は企業に入る事もあります。それが企業内法律部門コースです。一方、当然ビジネススクールの卒業生は殆ど大企業に入る事を目指しています。
 ポイントはアメリカでは様々な入社方法がありますが、経営者になる為には、ビジネススクールでMBAを取得して入社するのが一番の近道であるのは実績が証明しているようです。
   因みにアメリカの三大ビジネススクールは、
   ・ハーバード大学ビジネススクール
   ・マサチューセッツ大学ビジネススクール
   ・ペンシルヴァニア大学ビジネススクール
   になります。
 アメリカのビジネススクールは少なくとも300以上ありますが同じMBAの資格であっても、この三大ビジネススクールのMABの資格を取ると全く箔が違っているようです。なお、日本における
   三大ビジネススクールは
   ・一橋大学ビジネススクール
   ・慶応大学ビジネススクール
   ・京都大学ビジネススクール
   となっています。
 東大が入ってないじゃないかと思うでしょうが、東大はどちらかというと、民間企業の経営者ではなく(勿論、大企業の社長で東大卒が多いのは周知の通り)、日本の官僚を育てるという自負を持っています。また経済学はマルクス経済学と近代経済学に分かれていますが、東大は殆どの教授がマルクス経済学であることも一因になっていたと思います。因みにマルクス経済学は共産主義の理論根拠になっている学問です。東大は以前、近代経済学系のマーケティングや経営学を馬鹿にしていました。その後、ハーバードやマサチューセッツでこういう事を教えているという話をしても、馬鹿にしていたこともあり、東大にはビジネススクールが無いのです。
 しかし世の中がどのような事になったのかというと、実際の社会では近代経済学が主流となりました。労働組合の指導者はマルクス経済学も勉強していると思いますが、それを除けば、殆どが近代経済学です。以前(56年前)、私が出た大学でもマルクス経済学と近代経済学は8対2位でした。現在はどうかというと0対10の大学もあるそうです。
 一方、京都大学は自由な学風と言われています。戦後、マルクス経済学が主流だった時代に京都大学のK教授が「今こそ日米同盟が重要」であるという話をしていました。サンフランシスコ講和条約が先行き日本の進路を良い方向に決定付けると断言しています。絶対にマルクス経済学が尊重されるような時代になってはいけないという話です。日米同盟の傘のもとで経済成長を遂げるべきだとの事でした。当時、Y総理やK総理が批判されていましたがK教授は礼賛していました。
 一方、東大はY総理やK総理を批判していました。東大の批判を私はするつもりはありませんが、ノーベル賞の数が京都大学の方が多いのは周知の通りです。私は京都大学の自由な学風が無関係ではないと思います。また官僚の中にも日米同盟を重視している人も一杯います。現在は大分変わってきたようですが昔は社会主義思想が強い時代もあったのです。当時だからこそK教授の言っていた事は非常に勇気がある発言だったと思います。現在ではたくさんのビジネススクールがありますが、戦後、経済学の分野でもイデオロギー紛争があった事を記憶しておいて下さい。また、日本の経済学は理論経済学を尊重するという傾向があるという事も覚えておいて頂きたいと思います。
 次回はMBAの科目や職務記述書の話をしたいと思います。

2018年12月 開催

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