第143回 千年企業研究会(福井塾)議事録

令和7 年12 月16 日

法人税の振り返り

只今から12月度、今年度最後の千年企業研究会を始めたいと思います。このところ、法人税を学んでおりますが、今日も早速講義に入りたいと思います。講義に入る際、私が必ず触れているのが会計上の「収益-費用=利益」というワードです。それを法人税に置き換えると、「益金-損金=所得」となります。所得に落とし込む為に、収益を益金に、費用を損金に変えていきます。今はこの費用を損金に変えていくところを勉強しております。会計上は費用になりますが、税務上は損金にならないもの、最初は交際費から入りました。取引先等を接待してお金を使ったとしたら、会計上は費用になるのは当たり前ですが、税務上は全てを損金にする事は出来ません。税務署は出来るだけ多く税金を取りたい訳ですが、交際費を全て損金にされてしまうと、例えば意図的に銀座で毎晩100万円使ったりされて所得が減ると税金を取る事が出来ません。その為、中小企業であれば800万円を限度として、超える部分については損金不算入としている訳です。

2番目に話したのが寄付金。誰に寄付しようと勝手で、全額費用となり、利益は減りますが、税務上は交際費の様に800万円迄は出来る訳ではなく、ほんの少ししか損金とすることが出来ません。限度額は資本金の何十分の一等のルールがあります。それを超えると損金にはなりませんというのが寄付金でした。したがって、感覚的には寄付金という名前で費用計上したら殆ど損金にならないと認識しておいて頂きたいと思います。

3番目に話したのが役員報酬です。前回一部話をしておりますが、少し振り返っていきます。先ず従業員給与については全額損金となります。役員報酬だけ損金にならないのはずるいと思うかもしれませんが、きちんとした背景があります。従業員給与というのは会社の中でこの等級はこの金額という様に明確に決まっております。しかし、役員報酬は恣意的に決める事が出来てしまいます。例えば、全額損金になるとして、今期は儲かったので役員報酬でぎりぎりまで取って支払う税金を減らそうと皆さん考えます。そんな事をされたら税務署は税金を取る事が出来ませんから、ルールを設けたのです。役員報酬でも定期同額であれば認めますという様に、例えば年間1,200万円と決めて、それを12か月で割って毎月100万円ずつ払う、この方法であれば損金算入が可能です。役員賞与と言って、あまりあるものではないのですが、こちらも事前に届け出をする事で損金算入が可能です。株主総会で決議され、直ぐに税務署へ届け出る形となります。勝手に役員賞与を出したり、届け出をしてるにも関わらず、金額や日付を変更したら税金を掛けると脅しをかけている訳です。

話が少し飛びますが、法人税率というのは一般的に23.2%です。中小企業で課税所得が800万円以下ですと15%の税率と決まっております。個人ではどうかというと累進課税制度が取られており、所得が高いほど高い税率が適用されます。社長が個人として報酬を年間1億円貰いましたとなると、恐らく50%は税金が掛かります。なので、会社としては社長個人へ報酬を出して50%持っていかれるより、会社の内部留保として23.2%持っていかれる方がいいという考え方もあります。

別の方法としては業績連動給与というものがあります。これは事前に決めたルールに基づき役員の裁量が介在されない役員報酬となります。その為、損金算入が可能ですが、ルール上同族会社は対象外となります。ここで同族会社の定義ですが、株主の上位3人以下が株式の50%超を占めている会社となります。当社においても90%が名誉会長となる為、同族会社となる訳です。関連会社においても株主は一族となっておりますので、同族会社となります。したがって、業績連動給与については、当社は関連会社含め、出来ない事になります。

これ以外にも役員退職金があります。役員退職金制度はほぼ日本独自の考え方でどんなに金額を多くしても構わず、きちんとした規定を設けていれば損金となります。算出方法は、「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」が一般的となります。以下、最終月額報酬が100万円だとして、例を述べます。

平の取締役 100万×3年×1倍=300万円
常務取締役 100万×2年×2倍=400万円
代表取締役 100万×5年×3倍=1500万円 合計2,200万円

大雑把な例ですが、こういう計算をします。銀行等では、役員を10年やっているとポンと1億円出たりもします。当社は聞くところによると役員退職金制度はありません。関連会社でも役員退職金制度の規定はありますから当社でも誰かが勇気を以て進言するべきなのかもしれません。もちろん経済的事情もありますので、一概に無いからといって、批判する訳ではありませんが、これも一つの問題提起と思って下さい。全部に共通して言える事は全て規定で決まったやり方をしているという事です。これに違反すると損金にならないという事は理解しておいて下さい。また、その規定についても極端に高額ではないか、会社の従業員や規模に合っているか、つまり中身・経済実態が伴っているかの「実質基準」というのが重要となります。重ねて書類・手続きが整っているかの「形式基準」も重要で、税務上は両方を見る事が大原則です。この事を覚えておいて下さい。

本日は減価償却まで終わるつもりでしたが、復習だけで終わってしまったので次回、新年明けて1月は減価償却から入りましょう。本日は以上とします。

以 上