第141回 千年企業研究会(福井塾)議事録

令和7年10月21日

損金不算入

<法人税特有の思考過程>

会 計   収益  ―  費用  =  利益(当期純利益)
       ↓①②    ↓③④
税 務   益金  ―  損金  =  所得

① 収益じゃないけど→益金算入(無償譲渡)
② 収益だけど→益金不算入(配当金)
③ 費用じゃないけど→損金算入(繰越欠損金)
④ 費用だけど→損金不算入

法人税特有の考え方として根底にあるものは会計で、損益計算書となります。収益—費用=利益という公式があって、収益というと一般的には利益という言葉で置き換えて話してしまっている方もいるのですが、社会常識的にはそれで通じます。しかし、会計学での収益は利益ではなく、売上です。会計学の専門的な言葉を交わす時に収益と話して、利益と考える人は1 人もいません。したがって、用語というのは非常に大切なのです。そういう意味で考えると日本語というのは本当に判り難い、英語ならincome や profit という様に夫々の言葉が表すものがはっきりしていて間違いが少ない。少し逸れましたが、会計学が基本で、会計学に基いた利益が原点です。ここから所得を計算する為に収益は益金に、費用は損金に変えていきます。

税務処理について、先ずは収益じゃないけど益金になるものとして無償譲渡があります。これは誰かが持っている資産を無料で譲渡してしまった時、会計上は0円ですけど税務上は時価で売買したものと見做すものです。税務では0円で譲渡しているが、そこに税金が掛からないという訳にはいきません。

次に収益だけど益金に入らないものとして、配当金があります。思い出して下さい、これまでの講義でも話している二重課税にあたるものです。配当金は収益に入れても、益金に入れなくていいですよとなっています。算入率は、株主比率等によって違ってくる事もありますが、100%会社子会社からの配当金については100%益金不算入となる訳です。

3 番目に費用じゃないけど損金に算入ができるもの、有難いものです。実際にお金の支払いがなくても損金に入れる事で所得を少なく出来、結果支払う税金を少なくする事が出来ます。例として繰越欠損金があります。こちらは経営上赤字が続いた際、次の期が黒字だったら欠損金を繰り越して損金へ参入出来るものです。こちらもこれまで説明してきましたから細部は割愛します。

4 番目に費用だけど損金へ参入出来ないもの、本日はこちらを中心に話していきます。会計上これは費用計上して下さいという様に、費用に計上していきますが、税務では全額を損金へは算入出来ません。例としてあるのが、交際費・寄付金・減価償却費・法定外の役員報酬等が挙げられます。役員報酬はルールで決めたやり方をする場合には損金になりますが、逸脱すると損金不算入となります。この他にもあり、それをこれから勉強していきます。

今日はその中でも特に交際費について話していきます。交際費というのは全て費用になるので幾ら使ってもいいですよ。銀座のクラブに取引先といったので経理に領収証を渡した、使った側は10万円支払って終わりだと思っているが、経理にくると実効税率、ここでは大まかに30%と仮定した場合、さらに3万円税金払う認識となる訳です。ただし、この損金不算入のルールについては会社の規模、資本金が100億円を超える大企業に適用されます。

我々の様な中小企業はというと特典があります。資本金100億円以下の企業については、飲食その他これに類する行為の為に要する費用に限って 50%は損金算入が出来ます。こちらは昨今のコロナ渦により、飲食店は銀座だろうと新宿だろうと夜の水商売だろうと軒並み閑古鳥が鳴いていました。日本経済において、飲食業というのは相当なウエイトを占めておりましたので、そこは政治の力で、緊急に国会が開かれ何とか活性化させようと知恵を絞って、税金を緩和させようと与野党満場一致で決議された訳です。特例の2つ目として、資本金1億円以下の中小企業は年間 800 万円まで損金算入ができます。800万円を超える部分については損金不算入となってしまいます。では、交際費の中で飲食に掛かるもの50%と全体から800万円の両建ては駄目で、どちらか一方しか使えません。実態としては中小企業の95%以上の企業は800万円を選んでおります。交際費特例の計算分岐点は年間1,600万円となり、分岐点を超え飲食の割合が大きい企業は50%の特例を、それ以外については800万円の特例を選んだ方が良いということになります。接待交際費といっても実際は飲食だけでなく、贈答品やゴルフ接待など全部ひっくるめての接待交際費だからです。

ここまでやってきて、なお例外はあります。中小企業に限って一人1万円以下の飲食費について上限なく損金算入ができます。ただし、飲食にかかるもので参加した取引先名、参加した人数など条件を満たす事で会議費として損金処理が可能となります。企業内の人達だけでの飲食は該当しないので、そこは交際費として処理する事になっております。経理はそういった一つ一つを把握して、これは交際費、これは会議費と判断していく訳です。税務署側でもこういったものは実態で把握をします。事例を一つお話しします。社員旅行のお話で、2泊3日の香港旅行が福利厚生費の処理で、4泊6日のハワイ旅行が接待交際費になるというお話です。これが今でも適用されてるのかどうか判りませんが、かなり長い間こうでした。税務署の感覚で2泊3日の香港旅行は海外旅行と雖も、所謂華美じゃないという事で福利厚生費となり、4泊6日のハワイ旅行は贅沢旅行なので交際費となった事例です。最後は余談になってしまいましたが、4s番目の費用だけど損金には入らないという項目から今日は交際費についてお話いたしました。次回はこの続きからやっていきます。本日は以上とします。

以 上

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